短編集

未来 彷徨えるデータ

西暦7019年8月、太陽系外の空間Fゾーンにある、直径100km、人工太陽と人工重力発生装置を備えた宇宙居住ステーション「コスモコア」

Mユニバーシティの文学部「電子データ歴史考古学科」の学生ダンとキールが学部ゾーンの1つのブースで、汎用研究マシーンコンピュートを使って、人類の原点、特にまだ母星「地球」だけに居住していた時代のデータの調査・研究をしている時だった。

今の考古学には、地球に戻って個々の遺跡を調べることもあるが、それ以外に5000年前に発明された、二進法を使った初期の電子計算機から作られた電子データが地球や数か所の宇宙居住ステーションの中の保存媒体に記録されていた。その中から、研究対象を発掘し、それぞれの時代を探求する学問にもなっていた。

「キール、これを見てくれ。」ダンはコンピュートのサーチ機能を10日間稼働し続け、あるものを発見していた。

「何、ダン」 「これだよ。だいぶ前の地球にあった今のJAPANの古い文字で書かれた、文章とフォトだ。何かの記録のようだ」ダンは興奮して話した。

古い文字は、研究と分類機能が発達し、容易にどの時代のどこのものか識別ができるようになっていた。

そこに書かれていたのは、

(徒然の諸相 自らの歩みを通して 季節之団子)

ダンとキールは、何が書かれているか解読作業を始めた。

真夜中の爆撃機

真夜中、1機の爆撃機が、敵の基地の攻撃に向かっている。搭乗の若者たちは、ひとえに敵を倒し、自国に平和が続くことだけを思い、暗黒の空を飛行している。

かなりの量の空爆用の弾薬を積んで、みんなは無口だ。

敵の制空域に入り、迎撃機の気配を感じながら、暗闇を飛行している。

迎撃機は、いつ来るのか。この先何が待ち受け、何が起こるのかを、ひしひしと肌に感じながら、飛行が続いている。

寒色のスケッチ

今は美術の時間、美術教師が生徒に、色について説明を始めた。

「色には感じ方として、一般的に暖かい感覚の色と冷たい感じの色があります。これはただ単に、暖かい色が暖かさだけを、冷たい色が冷たさのみを表現するということではありません。

表現の仕方によっては、冷たい色でも暖かさは出せると思います。今日はそういう感覚というか、そんなことを考えながら、寒色でスケッチしてください」

ふとしたこと

雨が降り始めた。

外を見ると、すっかり道路が濡れている。 小さい庭の草木も濡れて静かな趣きである

空は灰色一色で、境目のない空間だ。そして雨が落ちている。

雨が上がり、また空を見上げると、雲が流れているのが見える。 雨上がりは雲が速く動く。

さらに明るさも増して、日の光さえ差し込み始めた。 空の色の中に青が出始めた。

時と共に見える世界が少しずつ流れている。

不変の風景

町を行きかい、橋を通過する人々。何の気ない風景である。

この風景は、年と共にその景観、服装・髪型、交通機関などが大きく変化し、それぞれの時代の様子を表している。

全てが変化するように感じる。人生の走馬灯のようだ。

しかし、よくよく見てみると、見る自分は変化している中、学生、会社員などの外見や時の経過は別にして、それぞれの年代の人々が、全く変わることがないように、今日も町を行きかい、橋を通過している。

まるで同じ人々のように。

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