千年の都、京都に住むことの意味

京都で生まれた訳はないので、京都に住むことの意味について考えることがある。

私にとって、それはまるで歴史の教科書の中で生活している感覚なのだ。何故なら、他の地方・地域には、そこで起こったことが詳しく、しかも多くの人に知られる形での記録があまり残っていないように思う。

私が知らないだけで、それぞれの場所には、それぞれ郷土史はしっかりと残されてはいるのかもわからない。

その上で、一般的に歴史の学習は、今はどうかハッキリ知らないが、私達は中学から学習した。多くの大きな歴史上の出来事が京都で起こり、その場所にはその名残として多くの史跡が現存している。

京都市の文化財 リンク

その辺りが、地方史とは圧倒的に違う点で、先ほど述べたように、正に歴史の教科書の中にいるイメージなのである。

京都が日本の政治の中心であった期間

794年 平安京遷都

398年間

1192年 鎌倉幕府開幕

(146年間)

1338年 室町幕府開幕

265年間

(1467年 応仁の乱)

(1590年 豊臣秀吉天下統一)

1603年 江戸幕府開幕 

(264年間)

1867年 大政奉還

2年間

1869年 東京遷都

だから、この道や、ある街角で歴史上の出来事が、何某か起こっている実感を、名残としての寺社、仏閣を通して味わうことができる。

1つの例が、友人の歴史の会で述べたように、豊臣秀吉の遺骨が、京都東山豊国廟に北西の方角を向いて実際に眠っているという。

京都には、これらのことを歴史の連続として眺めることができる奥行の深さがある。京都生まれでない部分、京都を客観的に見ることができるとも思う。

京都御所

そこのところをこれからじっくりと探していこうと思っている。

まだ十分に時間もあるし、実際に京都に住んでいるのだから。色々な場所で生活してきた私だからわかる意味である。

京都市の2つの山

京都市内には、京都駅ビルの屋上から見える800メートルを超える山が2つある。

左側が愛宕山、全国にある愛宕神社の総本社がある。そして、右側が天台宗の総本山延暦寺がある比叡山である。

平安京の北東の鬼門にある比叡山には最澄が平安京前700年代に開いた延暦寺が、奈良の興福寺と並んで南都北嶺と呼ばれ、平安京の守護として鎮座している。今知られる多くの宗派の名僧、例えば、浄土宗法然、浄土真宗親鸞、臨済宗栄西、曹洞宗道元、日蓮宗日蓮などが若い日にここで修行している。

愛宕山も700年代に修験道の神廟が立てられ、防火に霊験のある神社として知られ、「火迺要慎」という火伏札は京都の多くの家庭の台所や飲食店の厨房などに貼られている。また、三歳までに参拝すると一生火事に合わないと言われている。

また、知合いの方が話したことで、昔、愛宕山と比叡山が、どちらが高いかと争ったそうで、その時比叡山が愛宕山を叩いたらこぶができ、その頂上のお椀を返した部分だけが高くなったらしい。

そこで思い当ったことがある。それは山同士が直接争ったわけではないが、戦国時代末期、織田信長が比叡山延暦寺を焼き討ちにし、その織田信長が、愛宕山の愛宕神社に願掛けした明智光秀に本能寺で焼き討ちにあっている。まるで山同士の代理戦争のような出来事が京都の歴史の中にはかくされているように思えた。

晴れた日には、散歩をする宇治川河川敷から、2つの大きな山が東西から古都京都を見下ろす光景を目にする。

修学旅行に来る中学生との「京都について」の懇談で

京都の歴史については、詳しいわけではないが、アルバイトで、京都に修学旅行に来る中学生の事前相談と情報提供のために、webで懇談することがあった。自己紹介を兼ねて、自分と京都との関わりを話し、質問形式で懇談した。

その時、こちらも一応京都検定ではないが、京都全般について、ネットや観光ガイドで下調べをしたが、その時の情報として、アットランダムに掲載することにした。

・京都の花見では、春の桜だが、円山公園の枝垂桜を初め、嵐山、平野神社、哲学の道、南禅寺など至るところで楽しめる。梅では北野天満宮が有名だ。紅葉の秋は、これも嵐山、東福寺通天橋、高雄、清水寺などだろう。

・中学3年で引っ越してきた時、言葉には大いに困惑した。京ことばについては特に意識はしなかったが、知らず知らずに、オーキニ、アカンタレ、アカン、ホッコリ、モッサイ、カンニン、セワシイナイ、ショーモナイ、カナン、アラヘンなどを使うようになっていた。意味はいかに。

・京都の百貨店と言えば、四条通りの大丸、高島屋、藤井大丸、京都駅の伊勢丹である。京都の土産なども置いてあるので、買い物の失敗がないように思う。

・京都には寺社仏閣が多い。それぞれの場所にそれぞれの御利益があるようだ。例えば、入試の合格祈願には、学業成就の北野天満宮とかで、他に調べると、縁結びは清水寺の横の地主神社、商売繁盛の伏見稲荷大社が上がっている。

・寺社の塀について、正確には聞き取れなかったが、塀には横に線が入っていて線の数が多いほど格式が高いとのことで、5本が最高だとか。当然京都御所の塀は5本である

・京都での映画製作は古く、日本のハリウッドと言われたようで、多くの撮影所があったとのこと。観光地として東映太秦映画村は有名で、多くの観光客で賑わう。

・文化としてのお茶は、若い頃座禅会の後、お抹茶を振る舞ってもらうことがあり、その文化性に触れた気がした。有名な茶道家には表千家、裏千家、武者小路千家などがあり、堀川今出川上がった一帯に今日庵などの施設が集中している。また、お茶の種類には、玉露、ほうじ茶、煎茶などがあり、産地として京都府下の、平等院鳳凰堂などがある宇治市が有名である。

・歌舞伎や狂言、能楽は、本やインターネットで調べるしかない。なぜなら、歌舞伎や狂言、能楽は残念だが思い出しても見たことがないように思う。その舞台である南座に中に入ったり、能舞台は見たことはあるが。現存最古の能舞台は、西本願寺北能舞台で国宝らしい。

歌舞伎では年末に南座に役者名の書かれたまねきが上がる顔見世の光景は何度も見たことがある。四条大橋のたもとには、歌舞伎の創始者の「出雲の阿国」の像もある。

・舞妓さんは運が良いと祇園でお目にかかることはある。最近は観光客の舞妓もどきも多くなったが、歩き方や所作は一目で違いが判るような気がする。

・京都には色々な催し物があるが、8月お盆明け盂蘭盆会の16日、五山送り火がある。市内を囲む東北西の山々に「大」「鳥居」「船」「妙」「法」の炎が浮かび上がる、ご先祖供養の催し物だ。

・京都で知られている風物詩と言えば、夏の鴨川の納涼床がある。五条から御池辺りまでの鴨川の西岸にある多くの飲食店が鴨川に床を出し、日が沈むころから多くの客で賑わう。

・京都での年越しは、市内の多くの寺院で108回の除夜の鐘が鳴らされ、人間の煩悩を祓い、年越し蕎麦を食べて、正月を迎える。正月の朝のお雑煮については、八坂神社に「をけら詣り」をして、吉兆縄につけた火を回しながら持ち帰り、その火でお雑煮を食べると無病息災で暮らせるという話はよく聞くところだ。その他正月の行事では、北野天満宮での書初め、三十三間堂での弓の引き初めなどがある。

・京都で知られる市は、毎月21日の東寺の「弘法さん」と、25日の北野天満宮の「天神さん」だろう。境内に多くの骨董などの店が出て賑わう。

・京都の街並みは、中国の唐の長安などの街並みを模した碁盤の目をしていることは知られている。一条から九条や「あね、さん、ろっかく、たこ、にしき、し、あや、ぶつ、たか、」などの通り名を組み込んだ歌もある。

町屋は「うなぎの寝床」といわれるように間口が狭く、奥に長いことが知られている。これは気候にもよるのだろうが、昔の税金の関係だとも言われているらしい。

・近年世界や日本各地に世界遺産が登録されているが、京都市を初め17箇所の社寺や城が登録されている。上賀茂神社、下賀茂神社、東寺、清水寺、比叡山延暦寺、醍醐寺、龍安寺、平等院、宇治上神社、高山寺、西芳寺、天龍寺、金閣寺、銀閣寺、仁和寺、西本願寺、二条城の17箇所。

・京都には多くの美術館や博物館がある。京都国立近代美術館、京都市美術館、京都国立博物館、京都文化博物館などで、この他にも多くが市内に点在している。国宝は東京都の276件、京都府228件、奈良県198件と続くらしい。

・京都には多くの伝統工芸があり、それらの土産も多くある。伝統工芸は経済産業大臣指定の工芸品が17品目、西陣織、京扇子、陶器の清水焼などが指定されている。京土産としては、一時大流行の「あぶら取り紙」から「八橋」「茶の華」などの菓子、それこそありとあらゆる土産があるが、漬物などは日頃の生活でも楽しんでいる。

・お香にも興味を覚え、香炉を買った。あのなんともかぐわしい香りは気持ちを落ち着けることが出来る気がする。西本願寺の前の薫玉堂や烏丸二条の松栄堂はよく目にする。

・京都には多くの寺院や神社があることは先に記したが、その多くに固有の庭園がある。枯山水の庭は多くの禅寺にあり、また、平安神宮、城南宮、神泉苑などには池を配した庭園があるが、ほとんど知らないことが多く、これら多くの庭園をこれからじっくり探索することを楽しみにしている。(情報になっていない)

・仏像でいうと、東寺の講堂内の立体曼荼羅、三十三間堂の千手観音群は何度見ても圧倒されるが、その他の国宝などの仏像はあまり見ていない。仏像に関しては奈良の大仏や阿修羅像などを思い出す。仏像も今後の楽しみにしたい。 屏風ではよく行く建仁寺の風神雷神図屏風が有名だし、ちょっと趣きを変えて、漫画では烏丸御池に「漫画ミュージアム」がある。

・京都の商店街と言えば、古くからある「錦商店街」だろう。観光もしかりだが、京都人の日常品を扱っている。今はコロナもあり人も少なく、食べ歩きも遠慮してもらっているとのことだが、多くの店がある。その他市内いたるところに商店街がある。伏見では大手筋商店街は人通りが多い。

・京都の祭りと言えば、三大祭りで、5月15日の葵祭。御所から下賀茂神社、上賀茂神社をめぐる両神社の祭りで、最も古い。斎王代、牛車などが6時間に亘って練り歩く。7月の祇園祭は八坂神社の厄除けの祭りで、約1か月に亘り開かれ、山鉾巡行でクライマックスを迎える。10月22日の時代祭は平安神宮の祭りで、各時代の風俗行列が、御所から平安神宮へと練り歩く。

・京都の食べ物に関して、アットランダムに羅列すると、春と言えば筍が旬である。夏は鱧の落としアユの塩焼き、抹茶あいす、わらび餅、くずきり。寒くなると、湯豆腐、湯葉。門前の名物と言えば、今宮神社のあぶり餅、伏見稲荷のいなりせんべいなど。京都の料理と言えば懐石料理、精進料理などで、多くの老舗料亭があり、他に中華料理などもある。

その他、にしん蕎麦や鯖寿司、千枚漬、しば漬などの漬物。伏見の日本酒 月ごとの菓名の和菓子や八橋などの多くの菓子。そして京野菜として、賀茂なす、九条ネギ、聖護院だいこん、壬生菜、堀川ごぼうなどが有名なところか。

・生け花と言えば、京都のへそ六角堂の池坊だろう。

色々書いたが、京都に関する情報としてはほんの一部でしかないことははっきりしている。これからも自分自身で見たり聞いたりして発見したことは、少しずつでも追加していきたいものだと思うところである。

京都中心に歴史が進んでいった「時代」だが、地方も間違いなく「時代」を刻んでいく。詳しくかつ有名な記録が見当たらないだけなのかもわからないが。

改めて、基準としての、そして国家としての日本の歴史が京都にはあるということに気が付かされた。

何処でも住めば都だが、年を取った今、千年の都、京都に住む意味を噛みしめる日々である。

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